写真
今まで、旅行に行ってもわざと写真を撮らないでいた。写真を撮ることが主目的になってしまって、その瞬間を楽しめないと思っていた。
でも、記録に残すことはいいことだね。この経験は絶対に忘れないと思っても、細かな部分から少しずつ記憶は失われていくからね。それに、写真は記憶を呼び起こしてくれる。記憶をより強固にしてくれる。楽しかったあの時間に、すみやかに、思いを馳せることができる。
そして、撮った瞬間の被写体を独占できることが嬉しい。写真に撮られるために笑顔を返してくれる。ピースサインを作ってくれる。整った姿で撮られたいという欲望を見せてくれる。記憶にとどめておきたいという欲望を受け入れてくれる。写真として所有されることに同意してくれる。シャッターを切った瞬間の僕のために。
ありがとう
高校生の頃までは、「ありがとう」と何故か言えなくて、「どうも」という言葉をよく使っていた。
少し大人になって、ちゃんと「ありがとう」と言うように心がけるようになった。何度も言っていると簡単にありがとうと言えるようになった。
なんでこんな言葉に躊躇していたのか、よくわからない。気持ちがよく伝わってしまうような気がして、恥ずかしかったのかもしれない。でも言葉を変えた程度では気持ちは込められなかった。殻だけ大事にしても、しぼんでしまうんだよ。